中国ダイカスト調達の技術RFQ|見積前に明確にすべき図面・品質・金型条件

中国のダイカストメーカーへ見積りを依頼するとき、2D図面と3Dデータを送るだけでは、必ずしも同じ条件の見積りが返ってくるとは限りません。

たとえば、機械加工をどこまで含めるのか、気密性が必要なのか、外観面に特別な要求があるのか、新規金型なのか既存金型を使用するのか。こうした条件が明確でなければ、各サプライヤーが異なる前提で見積る可能性があります。

その結果、単価だけを比較すると安く見えた見積りでも、試作段階になって加工、検査、金型変更、追加工程などが必要になり、当初の見積条件との差が表面化することがあります。

技術RFQ(Request for Quotation)の目的は、できるだけ多くの規格や数値を記載することではありません。

重要なのは、見積価格と製造可否に影響する条件を明確にし、サプライヤー間の前提条件をそろえることです。

以下では、中国でダイカスト部品を調達する場合に、見積前に確認しておきたい技術条件を整理します。

1. RFQは「図面を送ること」だけではありません

ダイカスト部品の見積りには、製品形状だけでなく、製造工程全体に関係する情報が必要です。

代表的には、次のような項目です。

RFQで確認する項目 主な内容 見積りへの影響
製品情報 2D図面、3Dデータ、改訂番号 形状・寸法・最新版の確認
材質 合金記号、適用する材料規格 材料・鋳造条件
製造範囲 ダイカスト、機械加工、表面処理など 工程・設備・外注範囲
機能要求 気密、耐圧、外観、その他の特殊要求 工法・検査・工程設計
金型条件 新規/既存、所有権、保全、変更管理 金型費・量産条件
品質・検査 重要特性、測定方法、提出資料 検査工数・品質保証
数量・物流 年間数量、ロット、梱包、納入条件 生産性・物流費

すべての案件で同じ項目が必要という意味ではありません。

部品の用途、図面要求、顧客要求によって必要な情報は変わります。RFQでは、その案件に必要な条件を特定することが重要です。

2. 2D図面・3Dデータ・改訂状態をそろえる

3Dデータは製品形状を理解するうえで有効ですが、それだけでは製造要求を十分に伝えられない場合があります。

2D図面には、重要寸法、データム、幾何公差、表面要求、加工指示など、3D形状だけでは判断できない情報が含まれます。

RFQでは少なくとも、次の点を確認します。

  • 2D図面と3Dデータの改訂状態が一致しているか
  • 重要寸法や機能寸法が明確か
  • 加工基準となるデータムが明確か
  • 鋳放し面と加工面を区別できるか
  • 特別な外観・表面要求があるか

GD&Tや鋳造公差を使用する場合も、単に規格名を書くのではなく、図面で何を要求しているのかがサプライヤーに伝わることが重要です。

ISO 8062-3などの鋳造公差規格を適用する場合も、鋳造方法だけから一律の公差等級を決めるのではなく、図面要求、製造方法、後加工、検査方法を含めて製造側と確認する必要があります。

3. 材質だけでなく「どこまで製造するか」を明確にする

「アルミダイカスト部品」とだけ伝えても、見積条件は十分ではありません。

まず、図面または顧客仕様で要求される合金記号と適用規格を明確にします。

異なる規格体系の材料を、名称が似ているという理由だけで同等材として扱うべきではありません。代替材を検討する場合は、化学成分、機械的特性、製品機能、後工程などを確認したうえで、顧客承認を含む個別判断が必要です。

さらに、見積範囲を明確にします。

たとえば、

  • 金型製作
  • ダイカスト
  • トリミング
  • バリ取り
  • ショットブラスト
  • 機械加工
  • 洗浄
  • 表面処理
  • 組立
  • 検査
  • 梱包

のうち、どこまでを見積りに含めるのかを明示します。

特に中国調達では、鋳造単体の価格なのか、機械加工や表面処理まで含む完成部品価格なのかをそろえないと、サプライヤー間の見積価格を正しく比較できません。

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4. 気密・耐圧などの機能要求は「試験条件」まで定義する

ハウジングや流体部品などでは、「リークなし」「気密必要」とだけ記載しても十分ではありません。

必要な場合は、図面または品質要求として、

  • 試験媒体
  • 試験圧力
  • 保持条件
  • 許容リーク量
  • シール位置
  • 試験する工程段階
  • 含浸などの補修処理を認めるか

といった条件を明確にします。

これらは部品用途によって異なるため、ダイカスト部品に共通する万能の試験圧力や許容リーク量を設定することはできません。

また、外観要求、表面処理、重要機能面などがある場合も、可能な限り判定基準をRFQ段階で共有しておくことが重要です。

「良品の定義」が曖昧なままでは、価格だけでなく製造可否の判断も揃いません。

5. 金型条件は部品単価とは分けて確認する

新規金型が必要な案件では、部品単価だけでなく金型のスコープも見積条件の一部です。

確認項目としては、

  • 新規金型か既存金型か
  • 金型の設計・製作範囲
  • 金型材質に指定があるか
  • スライド、中子などの構造条件
  • 予備部品の範囲
  • 金型の所有権
  • 保管・保全の責任
  • 修理・改造時の責任範囲
  • 設計変更時の費用処理
  • 金型移管が必要になった場合の条件

などがあります。

金型寿命についても、すべての金型に共通する固定ショット数を前提にするのではなく、製品形状、金型構造、合金、鋳造条件、熱負荷、保全方法などを踏まえて確認する必要があります。

RFQの段階で金型条件を分けて確認しておけば、量産開始後に「その作業は金型費に含まれていない」といった認識差が生じるリスクを減らせます。金型製作を開始する前に買い手が確認すべきポイントは、金型製作開始前の確認ポイントで整理しています。

6. 品質要求は「規格名」より実際の判定条件を明確にする

品質要求では、ISO 9001、IATF 16949、PPAP、CMMなどの名称を並べるだけでは不十分です。

たとえば重要寸法については、

  • どの特性を重要管理するのか
  • どの工程段階で測定するのか
  • 測定方法は何か
  • 初回品で何を提出するのか
  • 量産時にどの記録を残すのか
  • 工程能力の確認が必要な場合、その判定条件は何か

を明確にします。

CMMを使用する場合も、測定機を使用すること自体が製品品質を保証するわけではありません。図面のデータム、測定方法、測定位置、評価方法などを合わせることが重要です。

PPAPについても、すべての案件で同じ提出レベルを要求するのではなく、顧客要求やプロジェクト条件に応じて必要な提出物を定義します。

つまりRFQで必要なのは、

「有名な品質規格を多く書くこと」ではなく、「何を、どの条件で確認するかを明確にすること」

です。

7. 年間数量・ロット・物流条件も技術見積りに影響する

年間数量は商務情報だけではありません。

数量によって、

  • 使用するダイカストマシン
  • 金型キャビティ構成
  • 自動化の必要性
  • 加工設備
  • 検査方法
  • 梱包方法
  • 生産計画

などの検討条件が変わる場合があります。

そのためRFQでは、可能であれば、

  • 年間予定数量
  • 1回あたりの発注ロット
  • 試作数量
  • 量産開始希望時期
  • 納入先
  • 梱包要求
  • Incotermsなどの取引条件

を共有します。

数量がまだ確定していない場合は、無理に一つの数字に固定するより、想定レンジや複数数量での見積りを依頼する方法もあります。

8. RFQで「定義すべきこと」と「一律に決めるべきでないこと」

技術RFQで特に重要なのは、この区別です。

RFQで定義・確認すること 一律に仮定しないこと
合金記号と適用する材料仕様 異なる規格間の材料を自動的に同等とみなす
図面上の重要寸法・データム・公差 鋳造方法だけから固定CT等級を決める
気密試験の実際の条件 ダイカスト共通の試験圧力・リーク基準
重要特性に必要な工程能力確認 全案件共通のCpk数値
金型のスコープと責任分担 共通の金型寿命・硬度・保全条件
必要な検査・提出資料 全部品にCMM、X線、PPAPを必須とする
年間数量・ロット・納入条件 数量条件が違う見積りを単価だけで比較する

この整理ができていれば、RFQは単なる「見積依頼書」ではなく、技術条件をそろえて製造可否と価格を比較するための共通基準になります。

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まとめ

中国ダイカスト調達で手戻りを減らすためには、サプライヤーへ多くの資料を送ることよりも、見積価格と製造可否に影響する条件を正しく定義することが重要です。

特に、

図面・材質 → 製造範囲 → 機能要求 → 金型条件 → 品質・検査 → 数量・物流

の順に整理すると、見積条件の抜けやサプライヤーごとの前提差を見つけやすくなります。

そして、図面や顧客仕様で決まっていない条件を、一般的な数値や規格名だけで埋めないことも重要です。

X-Diecasting Techでは、日系Tier-1メーカーで約20年、ダイカストの生産技術、量産立上げ、設備導入、金型・治具、品質改善、サプライヤー支援に携わった経験をもとに、中国側での製造先確認、技術条件の整理、見積時の確認から試作・量産フォローまで支援しています。具体的な支援の進め方は、中国側での支援の進め方をご確認ください。

中国でダイカスト・加工部品の見積を進める際に、RFQの技術条件や製造範囲を中国側で確認する必要がある場合は、図面、年間数量、材質、必要な後工程、現在確認したい課題をご共有ください。図面・案件について相談することができます。

よくある質問

ダイカストの見積り依頼には、2D図面と3Dデータの両方が必要ですか?

案件によります。3Dデータは形状確認に有効ですが、重要寸法、データム、幾何公差、加工指示などは2D図面で定義されている場合があります。RFQでは、サプライヤーが製造条件と検査条件を判断できる情報が揃っているかを確認することが重要です。

RFQの段階で公差や気密条件はどこまで決めるべきですか?

製品機能や見積価格に影響する要求は、可能な限りRFQ段階で明確にします。一方、鋳造方法だけから固定の公差等級を決めたり、一般的な気密試験値を流用したりせず、図面・顧客仕様・製品機能に基づいて条件を設定する必要があります。

金型条件は部品見積りとは別に確認する必要がありますか?

新規金型が必要な場合は、確認することを推奨します。金型の製作範囲、所有権、保全、予備部品、設計変更、修理・移管などの責任範囲を明確にしておくことで、部品単価だけでは見えない条件差を把握しやすくなります。