中国からダイカスト部品を調達する際は、単価だけではなく、材料・鋳造・二次加工・金型・品質保証・物流の6つのコスト要因に分け、各社の見積前提をそろえて比較することが重要です。
中国からダイカスト部品を調達するとき、同じ図面を複数のサプライヤーへ見積依頼しても、提示価格が大きく異なることがあります。
しかし、価格差があるからといって、単純に「最も安い会社を選ぶ」「高い会社の方が安心」と判断するのは危険です。
実際には、
- 材料価格の前提
- 取り数やサイクルタイム
- 加工範囲
- 金型費の扱い
- 検査内容
- 包装・物流条件
などが各社で異なっている場合があります。
そのため、まず確認すべきなのは、
どの見積もりが安いかではなく、各社が同じ条件で見積もっているか
です。
本記事では、中国からダイカスト部品を調達するときに、見積価格をどのように分解し、同じ条件で比較するかを整理します。
1. まず「価格差」ではなく「前提条件の差」を確認する
同じ図面を渡していても、見積条件が完全に同じとは限りません。
例えば、ある会社は金型費を別建て、別の会社は製品単価へ按分しているかもしれません。また、加工や検査、梱包、インコタームズ(Incoterms)の範囲も異なる場合があります。
比較前に、少なくとも次の条件をそろえます。
- 合金
- 製品重量
- 年間数量・製品ライフ全体の想定生産数量
- 加工・表面処理範囲
- 検査項目と頻度
- 金型所有・保全条件
- 包装
- インコタームズ
- 支払・為替条件
つまり、
価格比較の前に、比較条件をそろえる
ことが基本です。
2. 見積価格は6つのコスト群に分けて見る
ダイカスト部品の見積は、実務上、次の6つに分けると比較しやすくなります。
- 材料コスト
- 鋳造コスト
- 二次加工・後処理コスト
- 金型コスト
- 品質保証コスト
- 物流・商務条件
この6項目を分けて見ると、
なぜA社は安く、B社は高いのか
を説明しやすくなります。
3. 材料・鋳造コストは「前提値」を比較する
材料費では、製品重量だけでなく、
- 1ショット当たりの総注湯重量
- ランナー・オーバーフロー
- 回収材の扱い
- 材料価格の基準日
を確認します。
重要なのは、
サプライヤーがどの重量と材料価格を基準に計算しているか
です。
鋳造コストでは、一般的なサイクルタイムの数字を当てはめるより、
- 使用設備
- キャビティ数
- 想定サイクルタイム
- 自動化範囲
- 想定良品率
を各社に確認します。
同じ部品でも、1個取りか2個取りか、自動化範囲がどこまでかで、1個当たりのコストは変わります。
また、
良品率、材料歩留まり、設備稼働率
は別の指標なので、同じ「歩留まり」として混同しないことも重要です。
4. 二次加工と金型費は「含まれる範囲」を確認する
ダイカスト部品では、鋳造後に
- トリミング
- バリ取り
- CNC加工
- タップ
- 洗浄
- 熱処理
- 塗装・めっき
- 組立
などが加わることがあります。
同じ「完成品見積」でも、どこまで含まれているかは各社で異なります。
特にCNC加工では、加工箇所、治具、工程数、検査方法によってコストが変わるため、
鋳造品単価と加工完成品単価を混同しない
ことが必要です。
金型費も同様です。
確認したいのは、金型本体だけでなく、
- 入れ子
- スライド
- トリミング型
- 治具
- 試作
- 改修
- スペア部品
- 保全
がどこまで含まれているかです。
金型寿命についても、固定ショット数だけで判断するのではなく、
- どの部位が先に摩耗するか
- 入れ子交換が可能か
- 補修条件
- 更新費用の負担
まで確認した方が、実際のコストを把握しやすくなります。金型見積の仕様・責任範囲を製作開始前に確認するポイントは、金型見積の仕様・責任範囲を確認するポイントで整理しています。
5. 品質保証コストは「必要な検査」をそろえる
品質保証にもコストがかかります。
例えば、
- 外観検査
- 寸法検査
- CMM測定
- 気密検査
- X-ray検査
- 材料分析
- 初期流動管理
- PPAP資料
などです。
重要なのは、すべての案件に同じ検査を要求することではありません。
部品の用途とリスクに応じて、
- 何を検査するか
- どの頻度で行うか
- 全数か抜き取りか
- どの判定基準を使うか
をRFQ段階でそろえます。
ISO 9001認証は品質マネジメントシステムを確認する一つの材料ですが、個別部品の品質や検査頻度そのものを保証するものではありません。
6. 最安値ではなくプロジェクト総コストで比較する
プロジェクト総コストとは、製品単価だけでなく、金型・加工・検査・物流・品質対応まで含めた案件全体のコストです。
中国調達では、工場出荷単価だけでは最終コストを判断できません。
例えば、
- 包装
- 国際物流
- 通関・関税
- 国内配送
- 不良選別
- 再加工
- 金型改修
- 緊急輸送
- 追加検査
などが後から発生する場合があります。
そのため、単価だけでなく、
プロジェクト総コスト
で比較する方が実務的です。
例えば、
総プロジェクトコスト
= 製品購入費
+ 金型・治工具費
+ 二次加工・検査費
+ 物流費
+ 品質問題への対応コスト
という考え方です。
これは規格で定義された公式ではなく、複数のサプライヤーを同じ視点で比較するための整理方法です。
7. 見積比較では「価格」より「前提」を並べる
実際の比較では、単価だけでなく前提条件を一覧にすると判断しやすくなります。
| 比較項目 | サプライヤーA | サプライヤーB | サプライヤーC |
|---|---|---|---|
| 合金 | |||
| 取り数 | |||
| 想定サイクルタイム | |||
| 加工範囲 | |||
| 検査内容 | |||
| 金型費・保全範囲 | |||
| 包装・インコタームズ | |||
| 製品単価 |
このように整理すると、
なぜ価格差が出ているのか
が見えやすくなります。
価格が安いこと自体が問題なのではありません。
自動化率が高い、同類部品の量産経験がある、材料調達力が高いなど、合理的な理由で安い場合もあります。
重要なのは、
その価格差の理由を説明できるか
です。
8. RFQで最低限そろえたい項目
見積比較をしやすくするため、RFQでは少なくとも次を明確にします。
製品・工程条件
- 図面・3Dデータ
- 合金
- 数量・製品ライフ全体の想定生産数量
- 加工範囲
- 表面処理
- 組立・洗浄
品質条件
- 重要寸法
- 外観・気密要求
- 内部品質要求
- 検査方法と頻度
- 必要な初期提出資料
金型・商務条件
- 金型所有権
- 試作・改修
- 保全・更新条件
- インコタームズ
- 包装
- 支払条件
- 価格改定ルール
これらをそろえることで、
「安い・高い」
ではなく、
「同じ条件で比較した結果、どの提案が最も合理的か」
を判断しやすくなります。
まとめ
見積比較の要点
- 単価ではなく、各社の見積前提をそろえる
- 材料・鋳造・二次加工・金型・品質保証・物流の6要因に分解する
- 最終判断はプロジェクト総コストで行う
中国からダイカスト部品を調達するとき、重要なのは最も安い単価を探すことではありません。
まず、
- 材料
- 鋳造
- 二次加工
- 金型
- 品質保証
- 物流・商務条件
に分けて見積条件を確認します。
その上で、
各サプライヤーの前提条件を同じにそろえ、プロジェクト総コストで比較する
ことが重要です。
価格差があること自体が問題なのではありません。
本当に確認すべきなのは、
なぜその価格になっているのかを、サプライヤーが説明できるか
です。
次のステップ:見積条件をそろえて比較する
複数の中国サプライヤーの見積を比較する場合は、単価だけでなく、図面、材質、金型範囲、機械加工、表面処理、検査、数量、物流などの前提条件をそろえることが重要です。
まずは、見積前に整理すべき技術RFQで、サプライヤーへ提示する条件に抜けや前提差がないかをご確認ください。
X-Diecasting Techの中国調達支援における役割と取引の考え方については、中国調達支援の基本方針でご案内しています。
複数の中国サプライヤーの見積条件を整理・比較したい場合は、図面、数量、材質、必要な後工程、現在の見積条件をご共有ください。図面・案件について相談することができます。
よくある質問
Q1. 中国のダイカストサプライヤーで価格差が大きい場合、何から確認すべきですか。
まず、材料、加工範囲、検査内容、金型費、包装、インコタームズなど、各社の見積前提が同じか確認します。条件が異なれば、単価だけでは正しく比較できません。
Q2. 金型寿命はどのように比較すればよいですか。
固定ショット数だけでなく、鋼材、熱処理、冷却、摩耗しやすい部位、入れ子交換、補修・更新条件まで確認します。重要なのは、寿命の前提をどのように設定しているかです。
Q3. ISO 9001認証があれば品質面で安心できますか。
ISO 9001は品質マネジメントシステムを確認する一つの材料ですが、個別製品の品質を保証するものではありません。工程能力、検査方法、品質実績も合わせて確認する必要があります。
Q4. 中国のダイカスト部品は、日本調達より安ければ採用してよいですか。
単価が安いことだけで採用を判断するのは適切ではありません。加工範囲、検査条件、金型費、物流条件、品質対応などの前提をそろえたうえで、プロジェクト総コストと量産時の品質・納期リスクを含めて比較することが重要です。